2025/04/15 14:13
「すこやかなぬいぐるみ」は、手作りのぬいぐるみです。
この度、すこやかなぬいぐるみが絵本になりました!
物語と絵とともにお楽しみください。

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ある朝、女の人が注文していた「すこやかなぬいぐるみ」が家に届きました。
女の人はいそいで箱を開けて、包みからぬいぐるみを出してみました。
それは、青空のように澄んだ色をした、ねこのぬいぐるみでした。
女の人はぬいぐるみを両手につつみ、家のどこに置いてみようかと考えました。
まず、リビングのテーブルの上に広がっていたペンや本、マグカップを片付け、ふきんでピカピカにして、その上にねこのぬいぐるみを置いてみました。
ねこは新しいお家に喜んでいるように見えました。
そんなねこを見て、女の人はもっと色々な場所にねこを座らせてみたいと思いました。
本棚の上がいいかなと思い、本棚に目をやると、他のものがたくさん積まれていて、ぬいぐるみを置く場所が無さそうでした。
ベッドの横がいいかなと思い、ベッドを見にいくと、しばらく畳んでいなかった洋服たちが目に付きました。

「もう少し片付けようかな…」
そう思った女の人は、本は本棚に戻し、洋服を全て畳み、部屋の換気をしてホコリを払い、掃除機をかけました。
気づくと部屋はピカピカになっていて、陽の光もよく入るようになった気がします。
ねこも陽の光を浴びて、気持ち良さそうです。
女の人は、なんだか心がすっきりしました。
自分の服や食器、持ち物を大切に思えた気がしました。
忙しい毎日に追われて、家では急いで必要な家事をこなし、ご飯を食べて、眠るだけ、という生活を過ごしていた女の人は、久しぶりに生活を整えることができた気がしました。
大切な休みの日を、掃除や生活のために使うのは、なんだかもったいないように感じていましたが、それは自分自身を気にかけることなのかもしれないと思いました。
毎日家をきれいにすることはできなくても、たまにこうして気が向いた時に、ブワーっと片付け、掃除するのもいいなと思いました。

次の日の朝、女の人は起きると、いつもより整った部屋にわくわくしました。
髪を梳かして、顔を洗い鏡に映ると、いつもより綺麗になった気がしました。
リビングへ行くと、ねこのぬいぐるみがいました。
今日はねこが家に来て、はじめての朝です。
女の人は、記念に豪勢な朝食を作ろうと思いました。
ベーコン3枚をジュージュー焼いて、そのあと目玉焼きを焼きます。
それから、ポテトサラダとトマトを盛り付けて、パンを温め、オレンジジュースを注ぎます。
あっという間に、素敵なホテルの朝食のようになりました。
女の人は、素敵な朝食の横に、すこやかなぬいぐるみをちょこんと座らせました。
そして記念にパシャリと写真を撮りました。
また、たまに、元気のある時にでも、
休日は自分のために豪華な朝食を作ってみたいと思いました。
ねこも写真に入れて嬉しそうです。

女の人は、この日はどこにも出かける用事はありませんでした。
あまり遠くに出かけると疲れてしまうし、ずっと家にいてもすぐに時間が経ってしまいます。
特にやることはないけれど、昨日掃除していた時に見つけたお気に入りのスカートを履きたい気分でした。
女の人はお昼過ぎくらいまで、隣町のカフェに行ってみることにしました。
ねこは玄関で女の人を見送ります。
「行ってくるね!」
第一話 おしまい
これからも絵本はつづきます