2025/05/04 20:54

「すこやかなぬいぐるみ」に、物語絵本ができました!ぬいぐるみ制作に込められた想いを感じていただけたら嬉しいです。

一話読み切りの物語なので、どのお話からでもお読みいただけます。

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ここ数日、女の人は、眠りの浅い日々がつづいていました。

疲れているはずなのに、なぜかぐっすり眠れない日が多くありました。


数年前まで、女の人は夜道を歩くことが好きでした。

何も考えずにひたすら、ヒンヤリした空気の夜道を歩くことが趣味でした。しかし、この数年は家にこもることが多くなっていたのです。


時刻は夜八時、頬杖をつきながら、時計の下の本棚に座る「すこやかなぬいぐるみ」と目を合わせます。薄暗い部屋の中に、落ち着いた色のオオカミも身を潜めています。

きっと今日も眠れないんだ、と思うとなんだか外の空気をすいたくなってきました。小さなショルダーバッグに小銭とお守り感覚でオオカミを入れます。

久しぶりに夜道を散歩するのは、少し怖い気がしました。

夜道は、こんなにも暗かったかなと思い、女の人は、オオカミが入っているショルダーバッグを抱きかかえます。

道にほとんど人は歩いておらず、すれ違うのは散歩をしている犬くらい。


しばらく歩き、夜道に慣れてくると、強張った心がほぐれていくようでした。

透き通る冷たい夜の空気をすって、散歩をするのはとても心地が良いものです。

気が付くと、隣町まで歩いてきていました。


女の人は足取りよくUターンし、家の方まで向かいます。帰りは少しだけ道順を変えて、大通りの歩道を歩きます。

女の人は、ピカピカ光るコンビニを通りかかり、思わず寄ってバニラアイスを買いました。

急ぎ足で家まで帰ってお風呂に入り、バニラアイスを頬張ると、それは素晴らしい美味しさでした。


夜の散歩は、再び女の人の趣味になりました。

それだけでなく、休日には昼間に散歩することも多くなっていました。


昼の散歩をするようになってから、季節の移ろいや季節の花に気がつくことができたので、好きな花が増えていきました。

女の人は、散歩に忘れずオオカミを連れて行きました。それはお気に入りの花とオオカミを一緒に写真に撮ることが、もう一つの趣味になっていたからです。


散歩を再開した冬から、季節は春になり、乙女椿の美しさに魅了されオオカミと写真を撮ったことから始まりました。

可愛らしいホタルブクロ、しっとり雨の中に紫陽花が散ると、夏が来てジリジリ焼ける太陽の下でサルスベリが咲き誇ります。酔芙蓉が咲くと、冷たい風が秋を運んできます。

女の人の写真アルバムは、巡る季節とオオカミの「すこやかなぬいぐるみ」で彩られていました。この頃には毎日ぐっすり眠れるようになっていて、日々をしっかり踏みしめて過ごせている感じがありました。


たまに、近所の友人を誘って散歩をすることもありました。

散歩道のたくさんの草花に近づき、花の名前を言う女の人を見て、友人は言います。


「花の名前をよく知ってるね」


女の人は、その言葉を少し誇らしく思ったのでした。


第4話 おしまい

これからも絵本はつづきます

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