2025/04/24 21:04

手作りの「すこやかなぬいぐるみ」に、物語絵本ができました!
一話読み切りの物語なので、どのお話からでもお読みいただけます。

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女の人には一年の始まりに、習慣としていることがありました。
それは、その年の「叶えたいことリスト」を書くこと。
しかし、書き進めていくと、なんだか去年や一昨年と同じ項目がいくつも残っていることに気が付きました。
「今年もまた、叶えられずに終わっちゃうのかな…」
そんなことを考えていると、居てもたってもいられず、思い切ってリストの一番上の項目 "ぬいぐるみを迎える" をやってみることにしました。

しばらくすると、家に「すこやかぬいぐるみ」が届きました。
箱を開けると、雪のように真っ白なうさぎのぬいぐるみが、手を広げて出てきました。
女の人は胸の中に沸き起こるワクワクと共に「今年叶えたいことリスト」の一番上に、大きくチェックマークを書きました。

それまでなかなか埋まることのなかったリストにチェックが付くと、他の項目も埋めたくなってきて、今度は二つ目に書いてある "気になる喫茶店に行く" に挑戦してみることにしました。


女の人が気になっていたのは、街はずれの小さな喫茶店。
入口にはたくさんのツタが絡まり、重みのありそうな分厚い木製の扉は、大きな壁に思えます。
目の前まで来たはいいものの。やっぱり、入りづらい。

どうしようかな、やめようかな…

重たそうな扉を前にして、女の人の心はそわそわと揺らぎます。
でも、今日は一人じゃない。
バックの中には、このまえ迎えることができたうさぎのぬいぐるみ。
女の人は勇気を振り絞って、扉に手をかけました。
ぎぎぃー
重みのある木の扉は、ゆっくりと柔らかな空気の店内へ誘います。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
やさしい店員さんの声を聞いて、店内を見渡しました。
女の人は、一人で座るのにちょうど良さそうな席を見つけ、そこに腰かけました。
テーブルに着くと、店員さんが水とおしぼり、メニューを持ってきてくれました。
「本日のおすすめは季節のフルーツタルトです」
写真付きのメニューで、そのタルトを見た女の人は、自分へのご褒美にしようと思って、季節のフルーツタルトとブレンドコーヒーを注文しました。

しばらくするとテーブルは、芳ばしい香りのブレンドコーヒーと夏を感じる素敵なフルーツタルトで、彩られていました。
女の人はバックから「すこやかなぬいぐるみ」と「今年叶えたいことリスト」を取り出し、二つ目の大きなチェックマークを付け、記念に一枚写真を撮りました。
「また一つチェックがつけられた!」
そんなことを考えながら、喫茶店でのゆっくりとした時間をうさぎと一緒に過ごすなかで、女の人の心は自信に満ちてきました。

「私、もうなんでもできてしまうんじゃないかな」


それから女の人は少しづつ、着実にリストを埋めていきました。

気づくと、残るリストは最後のひとつとなっていました。
それは、当初まさか実行するなんて思ってもみなかった “ヨーロッパ旅行” という項目。
いつか行けたら、叶えられたら、と夢のように思っていたことでした。

しかし、今の女の人は、かつての自分とは違いました。
日々心から願うことに、素直に向かってゆくことができました。
ためらってしまう時も、ぬいぐるみと一緒なら、勇気を出すことができました。

出発の朝です。
女の人は、ボストンバッグにすこやかなぬいぐるみを入れて、搭乗チケットをしっかり手に持ち、空港へ向かいました。
空港へ向かう空気は、それまで感じたことのない清々しさと、ちょっぴりした不安の両方が満ちていました。

空港に着き、電光掲示板をチェックし、自分の乗る飛行機を探します。
出発まであと少し。
女の人は新しく、旅先での「叶えたいことリスト」を作り始めました。

第3話 おしまい
これからも絵本はつづきます
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